平成十五年三月九日
金峰山(きんぷさん)2,595m 前夜発日帰り

 以前、下山塾が創立される前に、この山に登ったことはあるのだが、前回は長野県側からのアプローチで、今回は山梨県側からのアプローチで行って来ました、この金峰山は長野では「きんぽう」山梨では「きんぷ」と呼ぶので今回は「きんぷさん」に行って来た事になる。
 今回は塾長が年度末決済で多忙の為、師範(ケン)と塾頭(ましらの勝蔵)の二人で行ってきました。
 都内を早朝3時半に出発し、途中食事をしたり、コンビニに寄ったり、タイヤチェーンを装着したりと何かと時間を食い、登山道(瑞牆山荘前)に着いたのが7時過ぎ、7時20分に出発する。
 しばらく登ってから、下山してきた三人組とすれ違ったのだが、物凄い重装備だ!「なんだありゃチョモランマでも行ってきたのかね?」っと思いながらも、「もしかして上は吹雪いているのかも?」「いや、下から見た感じじゃ雲も掛かっていなかったし大丈夫でしょう」等と話しながら登っていく。
 結構雪が深く富士見平で休憩がてらアイゼンと俺だけスパッツを装着する、この日は天候は快晴で富士見平から見る富士山は中々綺麗なもんでした、アイゼンを履いてサクサク歩いていくと雪に埋まった大日小屋が右手に見えた、しばらく行くと見晴らしの良い場所に・・・
「おぉ凄い岩だなぁ」っと仰ぎ見るとそれが大日岩でした、大日岩からは瑞牆がよく見えるのだが、此処大日岩と殆ど変わらない標高の瑞牆には余り雪がついてない様に見えるのはやはり岩山のせいかなぁ等とボンヤリしながら休憩を取る。
 休憩を取りながら、師範が「この岩は迂回するよりもこのまま登った方が面白いのでは?」と言うので(一般ルートは迂回する事になっている)ほんじゃぁ行ってみましょうか!と登る事に!

 師範が様子を見てくると言って先に登り始める、「どうっすか?行けそうっすか?」「行けますよぉ〜!」
 じゃぁ行きましょう。
登りつめてから、一般ルートに戻り樹林帯をガンガン登る、ガンガン登っていくうちに、ダンダン疲れて来ましたよ、チョッとペースを落としながら登ってしばらく行くと、明大山岳部の完全武装集団とすれ違う、「もしかして、やっぱり上は物凄い事になっているんじゃないの?」「いやぁ、明大の山岳部だから大袈裟な格好しているだけじゃないの?」等と軽口を叩きながら登っていくと、そろそろ森林限界になり、砂払いの頭が見えた、ふと見ると枝にはエビノシッポが着いていた、やはり稜線は物凄い事になっていた、此処で風雪に耐えるために合羽のズボンを履く、師範はスパッツを履き足回りをチェックし、フードを被る。
 



 手前から、砂払いの頭、千代の吹き上げ、金峰山頂の五丈岩。
一番奥の五丈岩を目指して出発じゃ、ひぇー物凄い風ですよおっかさん、左手(長野県側)から強風が吹いている、手元の寒暖計を見るとマイナス13度、そりゃぁまつ毛も凍る訳だ、眼鏡にも吐いた息が凍り付いて左目が殆ど見えない状態で登っていく、やっぱり眼鏡は不便だぁ。

 
 もうすぐ、もうすぐ頂上だ、ボンヤリ見えているのが五丈岩、しかしこの時既にオイラの体力は限りなく限界に近くなって来ていて中々脚が上がらず、普段だったらダブルストックでガンガン行くところが、なっなんと!家にストックを忘れてきてしまった為にそれも出来ず、風や眼鏡や疲れでフラフラになり、アイゼンでスパッツを破いてしまったのだった(しかも両足)。
 見るに見かねた師範はピッケルを貸してくれた、初めてピッケルを使ってみた、おぉおぉおおおおぉぉぉ!
 良いねぇ、ピッケル最高!下山したら早速購入じゃ、でも滑落停止訓練はちゃんとやらないとまずいから、師範教えてね!
 「いいから、早く登って来いやぁ!」っと師範からの無言のプレッシャーが…
 
 やっとこさ、頂上到着!おいら達のそばに建っているのが金峰山の看板で前回12月に来た時は背よりも高かったのに結構雪が積もっているもんですなぁ(雪の深さをチェック)
 さて風は相変わらず強いので金峰山小屋で休もうかと思ったのだが、小屋まで下って登っての往復40分が辛いとオイラが言い出し岩陰は風が来ないかどうか見てみると、完全無風状態!こりゃ此処しかないと、素晴らしい景色を見ながらエネルギー補給をする、疲れ果てたオイラたちは先ず、米や麦で出来た流動食(酒)が必要じゃ!オイラは麓のコンビニで買った地酒「喜久水」を、師範はビールを飲む、まるで宇宙戦艦ヤマトの波動砲のエネルギー充填シーンの如く、エネルギーが回復していく、おおぉお寒い!冷えた体を温めようと熱燗を飲もうとした師範がコッフェルを忘れた為貸してあげる、やっぱり熱燗は必需品だね、吐いた息が服に凍りつく様な所では温かいもんが一番。
 
 一時間程休憩した後、下山する風は相変わらず強いが下りなので楽だね、やはり我々は下山塾、下りでこそその本領を発揮するのだ。
 しか〜し!此処でハプニング!千代の吹き上げを降って地図を見ようと地図を出したら、強風の為にエアリアマップの地図のケースと案内書が山梨県側の谷底に…
 あ〜ぁ、しょうがないか山の神様ゴメンネ!っと思った刹那。
「俺、取って来ます」と師範が走って行った、無事に回収しピッケルを使いながら登ってくる師範。
 師範、ありがとう。

 さて、地図も無事に回収できた事ですし、行きましょうか!
手前に見えるのが砂払いの頭で右手の岩山が瑞牆山。
 
 砂払いの頭を降りたところで、アイゼンを外す。
ずっと雪がついていた為半分滑って降りたほうが早いだろうと、グリセードやシリセードを使いながら降りていく、此処でオイラは新しい下山スタイルを考案してしまいましたよ、名づけて「ハラセード」
 これは、腹ばいになり頭を下にして滑り降りる技術で、両腕でパドリング出来るのが最大の利点だが、頭が下の為障害物があった場合はハイリスクな技術でもある、しかしパドリングで緩斜面でも滑っていけるメリットもある両刃の剣でもある。
 
後に見えるのが金峰山!
今回は登りに5時間(コースタイムは4時間10分休憩は含まず)、山頂の昼食1時間、下りは3時間(コースタイムは2時間55分休憩含まず)で実働9時間かなり充実した1日でした、雪山最高だね。

 下山塾の今年の目標が2つ出来ました。
@人を馬鹿にしない。
A忘れ物をしない。

 @は守れそうに無いや。